今回は、堀江先生とスタッフとの質問形式です。
―日本酒を長く保存していると腐敗して酢になるのですか
堀江先生)
間違いですよ。非常識です(笑い)。理由は、明治時代の国税政策です。
明治29年10月に酒造税法が制定、その年に税務署が誕生しました。
当時、日清戦争後の軍備拡張と国営企業への財政支出が増大し、間接税を中心に増税が行われました。
酒造税は、明治29年~34年までの5年間で3回増税が行われ、明治32年には、酒造税の国税に占める割合が35.5%となり、それまでの国税の税収トップであった地租を抜いて国税の税収第1位になりました。
このような背景下、日本酒の増産が税収アップにつながることから、自然発生的に日本酒の長期保存は良くないとの間違った常識が今日まで続いているのです。
―日本酒を長期熟成(長期保存)するとどうなるのですか
堀江先生)
腐敗どころか、熟成方法如何により、成分変化から「老香(ひねか)」、「熟成香」が発生し、“まろやか”になります。
米の精米度合によっても違いがありますが、日本酒に含まれる乳酸、アミノ酸等の成分変化(メイラード反応)により“まろやか”になります。
僕は、生酛づくり、純米酒、精米度合70%、5年熟成が“フルボディ”の酒になると確信しています。
―「老香(ひねか)」と「熟成香」は違いますか
堀江先生)
従来、貯蔵・流通過程で生じる香りしは「老香(ひねか)」と呼ばれていました。
「老香」にも色々な香りがありますが、そのうち数か月から2年程度の比較的短い貯蔵・流通の間で生じる“たくあん”のような臭いが強いと品質が劣化したと感じられます。
一方、数年・数十年の単位で長期熟成させた長期熟成酒の”カラメル”のような香りは「熟成香」と呼ばれています。
そこで、酒類および種類業に関する研究・調査の成果を広く国民に提供する機関『独立行政法人酒類総合研究所』は劣化臭を「老香(ひねか)」と定義し、「老香(ひねか)」と「熟成香」に関する研究を開始しています。
その結果、「老香(ひねか)」の”たくあん”のような臭いは「ジメチルトリスルフィド」という物質が主成分であること、また「熟成香」の”カラメル”のような香りは「ソトロン」が大きく関わっていることが明らかになりました。
いずれにしても、「老香(ひねか)」と「熟成香」は紙一重ですよ。
―日本酒の長期熟成機の方法は
堀江先生)
日本酒の劣化原因は「光」、「高温」、「酸素」によるメイラード反応ですが、特に「光」に気をつけることが最大のポイントです。
アルミホイルと新聞紙で包装、光のない、15度以下の所(床下など)で保存してください。
以 上