(その3) 『出雲国風土記』
『出雲国風土記』は天平5年(733年)に編集され、「国引き神話」を始めとして出雲に伝わる神話などが記載されています。現存する写本は70種程ありますが、出雲市の日御碕神社所蔵の写本は島根県指定有形文化財に指定されています。出雲国の意宇郡、島根郡、楯縫郡等の条から構成されています。
酒の造り方は、「醸造酒」です。
楯縫郡(たてぬいごおり)の条の佐香郷に“佐香の川の流域に百八十の神々がお集まり、飲食物を煮炊きする調理場をお建てになり、そこでお酒を造らせになりました。そして、百八十日間酒宴をして楽しみなされた後、お別れになりました。それによってこの地を佐香というようになりました。”
ここで、ワンポイントレッスンです。
➡島根県出雲市小境町108番地清水に鎮座する佐香神社があります。別名、松尾神社。出雲国にとって、10月は『神在月』、その月の13日に行われる秋季大祭は、濁酒祭(どぶろくまつり)とも呼ばれ、室町時代から続いているとされ、酒造の神として酒造業者からの信仰を集めています。
最後に、宮司さんよりお聴きした佐香神社に伝わる話を紹介しておきます。
「向かいの小高い森に松の大木が数本あった。全国から神さんが集まって来て話し合いをしようとしていたとき、いい香りがしてきた。このあたりは、神田として米をつくっていた。そのいい香りがするものとは、刈り取った稲穂を雀が咥えて、松の木の根元の洞に運んだものが発酵してできた酒であった。」
(つづく)
次回、日本酒造りの源流へタイムスリップは、第2話『古事記の世界の日本酒造り』の紹介を予定しています。